朝会の話 89 運動会 一番より尊いビリだってある

 おはようございます。
 今朝まで降っていた雨も止み、素晴らしい秋晴れのよい天気になりました。今日は秋の運動会です。2学期の初めからの練習はわずかな時間でしたが、練習してきたことを、ここで精いっぱい表す時です。
 紅白に分かれてやる競技は、みんなのまとまった力を出す時です。体操やダンスでは、あなたたちの演技の力を出す時です。それぞれしっかりやりましょう。
 ちょうど今から30年前の昭和39年、東京でオリンピック大会がありました。開会式の10月10日は今日のようにとてもよい天気でした。世界の98の国々からたくさんの人たちがきて、力の限りいろいろな競技をしました。
 始まって5日目の夕方から、1万メートル競争がありました。1万メートルは1周400メートルのトラックを25回走るのです。38人の選手が走るのですから、最後まで誰が勝つか分かりません。終りの100メートルになってから、やっとアメリカの選手が前の選手を抜いてゴールインしました。タイムは28分24秒4でした。ずいぶん長い間走るのですね。
 その後あとからあとから、選手がゴールインしてきました。ほとんどの選手がゴールインしましたが、一人の選手がまだ走っています。ゼッケンは67番セイロンのガルナナンダ選手です。拍手がスタンドからわきあがりました。2周遅れてやっとゴールに近づきました。ワーッという大歓声があがりました。やっと走り通したのです。だが、ちがいました。ガルナナンダ選手はわき目もふらずにゴールを走りすぎます。まだ、1周、400メートル残っていたのです。あれっと思った観衆は、こんどはものすごい拍手にかわりました。たった一人で最後まで走り通すガルナナンダ選手に対して7万人の観衆だけでなく、テレビを見ていた多くの人まで、わたしもそうでしたが、拍手を送り続けました。多くの拍手と歓声を背に受けながら、ガルナナンダ選手は両手をあげてゴールにとびこみました。
 私も、この様子をテレビで見ていました。たとえ一人になっても最後まで走り抜く姿に感動しました。素晴らしい1万メートル競争でした。
 確かに、優勝した選手は素晴らしいです。もちろん入賞した選手も素晴らしいです。しかし、たった一人になってもなお競技場を3周もしたガルナナンダ選手も素晴らしいですね。
 「1番はもちろん尊い。しかし、1番よりも尊いビリだってある」という言葉を兵庫県のある校長先生がいわれています。ガルナナンダ選手はこの1番より尊いビリを走り抜きましたね。
 代表委員会で運動会のめあてを「最後まで紅白みんな元気よく」決めましたね。このめあてのように、あなたたちも、ひとりひとり、この学校の運動場をオリンピックの競技場と思い、オリンピック選手のつもりで最後の最後まで元気よくがんばってください。1994年9月25日