朝会の話 83 悲しい思い出 2

 おはようございます。
 先週は洋子さんの話を途中までしましたね。今日は、その話の続きをします。
 ある日、先生は少し職員室で用事があったので、自習用のプリントを渡し、「このプリントで自習していてください」と日番の人に渡しました。15分ほど遅れて、教室に行きました。みんな静かに自習をしているので、安心していました。ふと洋子さんを見ると、しくしく泣きながら、しわくちゃになり、靴跡が付いたプリントを一生懸命に伸ばしているのです。先生は「どうしたの」と聞きましたが。ただ泣いてばかりいるのです。先生はみんなに「洋子さんのプリント、どうなったの」と聞きましたが、だれも何も言いません。そして、何人かの人に尋ねても「知らん」と言うのです。先生は、黙って新しいプリントを洋子さんに渡しました。
 先生のクラスでは、、毎朝、家で書いてきた日記を提出します。翌日も日記を提出してくれています。すると、洋子さんと同じグループの女の子、その子の名前を和子さんとしておきましょう。その和子さんが、私の所にそうと日記を持ってきました。何かいいたそうでしたが、誰かを気にしているようでした。ふと、和子さんの日記をみると、後ろに、「これは教室では見ないでください」と書いてありました。
 休憩時間になったので、その日記を持って職員室にいきました。そして、その日記を読みました。
「先生、今日もまた、洋子さんがいじめられました。洋子さんはかわいそうです。日番の人がプリントを配りました。みんなには、机の上にちゃんと置いてくれるのですが、洋子さんのんは、ポイと投げるのです。うまく机の上にいかないで、下に落ちたのです。まわりの男の子が、「わーきたない。」と言って靴でぐちゃぐちょにしました。だから、しわくちゃになったのです。みんな、洋子さんばかりをいじめるのです。私も、洋子さんに優しくするから、よくいじめられますが、洋子さんはもっともっとひどくいじめられます。先生、なんとかしてあげてください。こんなことを日記に書いたことを誰にも言わないでください」
 先生はとても悲しくなりました。それと同時に、和子さんが勇気を出してこんな日記を書いてくれたことはとても嬉しかったです。
 洋子さんは、時間さえあれば、教室の先生の机の上や周りをいつもきれいにしてくれます。その度に先生は、
「洋子さんありがとう、洋子さんがいつもきれいにしてくれるから先生はとても嬉しいです。」と言っていました。
 春の遠足の日がきました。遠足の日はみんなとてもうれしいので朝早くきます。集まる時刻になりました。みんな来ているのですが、洋子さんはまだきていません。先生は心配になりました。あまり遅いので、急いで職員室で電話をかけました。でも電話にはだれも出ません。どうしているのかなあと思って校門の方にいきました。すると1年生と2年生の弟と一緒に走って学校にきているところでした。先生はほっとしました。
 5年生は、教材植物園に行くのです。みんな待ちに待ったお昼がやってきました。みんなは仲良し同志が集まってお弁当を食べます。ふとみると、遠く離れたところで、洋子さんだけが一人で食べています。
 先生は、みんなと離れて、洋子さんの所に行きました。洋子さんはお弁当を隠して食べています。先生は洋子さんに「洋子さん先生もここで食べていい」と聞きました。洋子さんは恥ずかしそうに
「うん」と言ってくれました。
 ふと洋子さんのお弁当をみると、おにぎりだけです。
 まだ、先生の悲しい思い出の話は終わりません。この続きは来週いたします。
今日は、これで終わります。1994年7月11日