朝会の話 81 悲しい思い出 1

 おはようございます。
 今日は先生が悲しかったことをお話します。
 ちょうど12年前に、新しい学校に転任しました。そうして、5年生を担任しました。組分けの時、一人づつ名前を呼びます。そうして、決められた場所に並びます。だんだん終りに近づいたときに、一人の女の子を呼びました。その女の子の名前を仮に洋子さんとしておきます。一瞬、何人かの子の表情が変わりました。全部組分けができたので、背の順に並び、教室に入りました。男女一人ずつ座りなさいといいました。
 先生が教室に入ると、みんなきちんと座っているのですが、洋子さんの隣に座っている男の子だけが洋子さんと広く間を空けているのです。
 何日か経って、係りを決めることにしました。みんな、自分がしたい係りを発表して決めていきます。みんな決まっていったのですが、洋子さんだけまだきまりません。そこで先生は、洋子さんに「どの係りをしたいですか」と聞きました。洋子さんは黙っています。先生は「洋子さんそれなら、先生係りをしてください」と言いました。先生係りはありませんが、洋子さんのために特別につくりました。洋子さんはほっとした表情になりました。みんなもなんとなくほっとした表情でした。
 また、何日か経ちました。グループに机を並び変え、グループわけをしました。初めてですので先生が分けました。洋子さんのグループには、とてもやさしそうな女の子一人と、男の子二人を決めました。少しいやしそうな様子でしたが、すぐに仲よくなりました。私は安心しました。
 ところが、何日か経って洋子さんと同じグループの男の子が私のところにやってきました。そして、「先生、みんな僕たちを遊びの仲間にいれてくれないのです。そうして『おまえら、洋子さんと遊んどけ』と言うのです。」私は「君たちは、今までもそうだったの」と聞きました。男の子は「いや、洋子さんと同じグループになるまではみんなと仲よく遊んでいました。」というのです。私は「よし分かった。」と答えました。
 洋子さんが給食当番になりました。おかず係りになりました。その時から、給食のおかずを残す子が多くなりました。
「先生、ちょっとお腹の調子が悪いですから残します。」と言いにきます。
 新しい学年が始まって2週間ほどで私はいろいろなことが分かりました。
 洋子さんと一緒に遊んでいるお友達はあまりありません。時々洋子さんと同じグループになった女の子が遊んでいるときがあります。ほとんどは、1年生と2年生の弟と一緒に遊んでいます。
 洋子さんは、先生係りになったので、いつも先生の机の上や周りをよく掃除をしたり、きちんと整理したりしてくれます。先生は洋子さんにいつもありがとうと言っていました。その度に「いいえ、私の係りの仕事だからちゃんとするのが仕事です」と言ってくれます。
 ある時、こんなことがありました。
 この話の続きは今度します。
 みなさんもこの話を聞いて、いろいろと考えてください。1994年6月27日