しつけは創造的な仕事

 子育てや教育の難しさは、あるやり方で育てれば予想したとおりになるということが少ないところにあります。つまり、子どものしつけや教育においては、子どもを親の思いどおりにすることはできません。
 親が子どもをしつけるのに、どういうやり方をするかは、次のようなことが影響していきます。
 一つは、自分の経験です。自分がどのようにしつけられたかが子どものしつけ方を決めます。親の育て方が反面教師的役目をすることもありますが、虐待された親がわが子を虐待してしまうことも多いです。
 次に、育児書などの情報がしつけのやり方を決めていることがあります。特に今日のように核家族化が進み、育児について相談すべき人が近くにいないとき、育児書の知識に頼ろうとするのは当然なことです。子どもの発達についての知識やしつけの様様な情報などを上手に活用していくことは大切ですが、振り回されてはいけません。一般にしつけは育児書どおりにいかないものです。なぜならば育児書には一般論しか書かれていないからです。どのようにしつけるべきかは子ども一人一人異なっていて一般論は当てはまらないことが多いです。
 また、きょうだいがいる場合、親は上の子どもにやってうまくいったやり方を下の子どもに当てはめようとします。しかし、それではうまくいかないことが多いです。それは、第一子と第二子以降という出生順位の違いもあるし、異性きょうだいのときは性差もあります。きょうだいといえども、一人一人顔が違うように性格や気性や考え方が異なっています。だから、同じようにしつけても結果は同じにならないのです。しつけでどの子にも当てはまる最良のやり方はありません。
 このように考えるとしつけはきわめて個別的で、創造的な仕事なのです。最終的には、子どもへの愛情を忘れないで親がこれでいいと思ったことを自信もってしていくことが大切です。
「『心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』これがたいせつな第一の戒めです。」
マタイ22章37節38節 グッドニュース2003年5月号「母と子の相談室」より