しつけ上手な親になるために 親がどう生きるか

 私が指導主事をしていた時には、学校で先生たちの授業を見る機会が多くありました。教室に一歩足を踏み入れた時、肌でその学級の雰囲気を感じました。学級担任をしていた時、子どもの家庭を訪問する時が多くあります。その時にも、玄関に入った途端、その家庭の雰囲気を感じました。
 家庭で公園に出かけ、楽しいひと時を過ごし、いざ帰宅しようとするときに、子どもたちが散らかしたごみをそのままにして帰るとしたら、その家庭からはどのような雰囲気が感じられることでしょうか。電車で乗客の迷惑そうな視線にも気づかずに、車内を駆け回る子どもを注意せず、おしゃべりに夢中な親の姿は、どんな雰囲気を生みでしているでしょうか。
 社会生活に必要な「ルールを守る」ということをしつけようとするためにはこの「家庭の雰囲気」がとても大切なのです。
 かつての時代は、いたるところに空き地があり、近所の子どもたちがそこに集い、異年齢集団を自然発生させていました。そこでは、年長者が子ども集団のルールとそれを守ることの大切さを年少者に伝えるという「空き地での教育」が展開されていました。また、三世代・四世代の家庭もめずらしくはなく、兄弟も多く、家庭の中で自然のうちに「ルールを守る」しつけが行われていました。
 集団が形成されれば、自ずとそこに自分と違う仲間が意識されます。そして、そこでは、自分だけの思いや自分勝手な行動が許されないということを子どもたちは体験的に学んでいきます。
 ところが、今日の子どもたちは、兄弟の数が少なく、家庭では甘やかされて育ち、他人を意識せずに、自分勝手な行動に走ってしまう場合が多いです。その上に「ポイ捨てパパ、子どもにマナー説く」といった情景も見受けられます。親自身が「ルールを守る」という社会生活をする上で大切なしつけができていない場合も少なくはありません。
 子どもに「ルールを守る」ということをしつけるためには、親自身がどう生きるかにかかっています。家庭がどのような教育的雰囲気をもっているかによって、子どもは変わるのです。
「こういう人は、その行いによって祝福されます。」  ヤコブの手紙1章25節 グッドニュース 2003年2月号「母と子の相談室」より