朝会の話 75  母の日にちなんで お母さんの手

 おはようございます。
 昨日は、5月の第2日曜日で母の日でした。皆さんは、お母さんに手紙を書いたり、カーネーションの花を上げたりして、お母さんに感謝をしたことでしょう。
 先生のお母さんは、11年前になくなりましたので、先生のお母さんに対して「ありがとう」と言うことができません。すこしさびしいです。
 先生は、先生のお母さんがなくなる前の晩、病院でお母さんの側について一晩すごしました。
 意識もないような状態でしたが、口を動かして何か言っている様子でした。先生は一晩中、お母さんの手を握っていました。
 とてもザラザラした手でした。その手を握りながら、いろいろなことを思い出していました。
 先生が、とても悪いことをして、お母さんに叱られ、地下室の中に入れられた時のこと。戦争中食べ物がなく、その上、兄弟の数が多いため、畑でいろいろな物を作った時のこと。御飯を炊いたり、お風呂を沸かしたりするための薪を拾いに山に行ったこと。
 その時のお母さんの手は、傷だらけの手でした。
 ドロンコになったズボンや服に石鹸を付け、冷たい水でごしごしとこすっていたお母さん。夜に破れた服やズボンを暗い電灯の下で一生懸命に繕っ(つくろっ)ていたお母さん。その時のお母さんの手はあかぎれだらけの手でした。
 幼稚園の時、ひどい熱を出して3日も4日も熱をさますために、夜中でも先生の額に冷たい水で冷やした手ぬぐいを何度も何度も変えてくれたこと。先生が大学に行くために田舎を去って行った時、駅のプラットホームから、いつまでもいつまでも手を振って時のこと。その時の手は、とても優しい手でした。
 そんなことを一晩中思い出していました。
 先生は、そんなお母さんにどれだけ親孝行したのだろうと思うと涙が出てきました。
 お母さんの手ってとても素晴らしいものです。
 皆さんの中には、今は、お母さんと一緒に住んでいない子もいるでしょう。また、先生と同じようにもうなくなってしまった人もいるでしょう。いずれにしても、みなさんのお母さんはどこかにいるはずです。
 今、心の中で「おかあさんありがとう」と叫んでみてください。きっとどこかで、みなさん一人一人を励ましてくださっていますよ。
 先生も昨日は一日中、お母さんのことをいろいろと思い出していました。そして「おかあさんありがとう」と叫びました。天国から「健一、誰にもやさしくするんだよ。天国からいつも応援しているからね」という声が聞こえてきました。
 きょうは、お母さんの手というお話でした。
 また、みなさんのお母さんの手のことについて、詩や作文を書いて先生に見せてください。楽しみにしています。1994年5月9日