思春期の子どもから逃げずに(1)

私たち大人には考えられない事件が後から後から起こります。連続児童殺傷、教師刺殺、女性殺害、五千万円恐喝、見知らぬ主婦殺害、そしてバスジャック殺人と。少年や若者たちによる残忍な事件が後を絶ちません。彼らがなぜ暴力を振るい罪を犯すのでしょうか。それもすべて思春期の子どもたちが。
 思春期は、子どもたちが心身とも急激に変化し、自らの内面を再構築する大切な時期です。思春期にある子どもたちが示す言動は、親を当惑させたり、混乱させたりすることがあります。このような事件が起こるたびに、私たちと子どもたちとの間が少しずつ遠くなってきたように思われます。そのために、親だけでなく私たちは、思春期の子どもたちに対して腫れ物にさわるような接し方になってしまいます。
 思春期を迎えた子どもたちは、自分自身中で悩んでいます。
 親も教師も子どもたちに幸せになってほしいと心より願っています。子どもたちの不幸を願っている親や教師はどこにもいません。
 「勉強より遊ぶことが大切」と考えている親は少なくはありませんが、残念ながら実際は逆で、子どもたちに勉強を強いています。一生懸命に勉強し、よい中学校に、よい高校に、よりよい大学に入学し、よりよい企業などに就職することが幸せになると親は勝手に描いています。
 親の期待に応えようと子どもたちは精一杯努力し、よい子を演じ、演出しています。そのために子どもたちは相当努力しています。努力すればするほど、自分の願いに逆らい、不自然に振る舞い、行動します。子どもたちがよい子を演じきれなくなって、よい子を放棄するか、疲れ切ってぶっ倒れるか、何らかのきっかけが出てくるまで、それは続きます。
 子どもは、元来自己中心的で大人が考えるような「よい子」ではありません。この内面の思いを知って、温かく受け入れるところからまず始めてほしいです。
「小さい者のひとりが滅びることは、天にいますあなたがたの父のみこころではありません。」マタイの福音書18章14節
グッドニュース2000年7月号「母と子の相談室」より