朝会の話47 水泳って楽しいよ

 
 おはようございます。
 先週の月曜日から、プ−ル水泳が始まりました。先週は雨が多く十分に泳ぐことができませんでしたね。でももう直ぐすると、梅雨も明け、水泳シ−ズンが始まります。そうするともっともっと泳ぐことが楽しくなります。
 先生が1年生を教えていたときに水泳がとても苦手な子がいました。その子の名前は、てるちゃんでした。
 一番はじめにプ−ルに入った時でした。プ−ルサイドには座るのですが、そこからはなかなか入ろうとしませんでした。みんなは楽しそうに水の中で遊んでいるのに、てるちゃんは一人でプ−ルサイドにいました。一日目は、てるちゃんはプ−ルの中には入りませんでした。
 二日目も、一日目と同じです。
 あまりかわいそうなので、先生はてるちゃんに
「てるちゃん、先生が抱いてあげるから、みんなと一緒にはいろうよ。」といいました。でも、「うん」とは言ってくれません。
「こわくないよ。みんなもとても楽しそうに遊んでいるのだから。」と言いましたが、だめです。仲良しの直子ちゃん
「てるちゃん、怖くないよ。先生に抱いてもらっておいでよ。」
と言ってくれます。恵ちゃんも同じことを言ってくれます。
 みんながてるちゃんに優しく言ってくれるので、てるちゃんは仕方なく
「うん。」
と言ってくれました。先生はてるちゃんをしっかり抱いてプ−ルの中に入りました。てるちゃんの足だけが水に入っているだけです。でも、とても怖いのか、先生の肩をきつく抱いています。先生は少し足を屈め、てるちゃんを水の中に入れました。てるちゃんはますます強く先生の肩を持ちます。肩の所までてるちゃんを入れました。てるちゃんは、泣き声になって
「怖い怖い、もう出る。」
と言います。先生は
「怖くないよ、先生の目をじっと見てごらん。先生は決しててるちゃんを離しはしないよ。ぐっと抱いているから心配しなくていい よ。そら、先生の目をじっと見てごらん。」
と言って首まで入りました。直子ちゃんも、恵ちゃんも、他の子もみんな拍手をしてくれました。みんなが拍手をしてくれたので、てるちゃんも怖くなくなったのか、自分の足を下に伸ばしました。そうすると、てるちゃんの足が底につかえるのです。いつの間にか、自分の足で、ちゃんと立っているのです。先生は、そうっと、手をゆるめました。てるちゃんも、先生をぐっと掴んでいた手をゆるめます。
「そら、てるちゃん、自分一人で水の中に入れたよ。先生、手を離すよ。怖くないでしょう」
と言って手を離しました。てるちゃんは、にこっと笑って一人で立ちました。クラスのみんなは大拍手です。お友達の直子ちゃんや恵ちゃんはてるちゃんの手を引っ張ってみんなのところに行きます。
 先生もうれしくなって、みんな楽しく水のかけあいをしました。もうてるちゃんは、大丈夫です。みんなと楽しく遊ぶことができたのです。
 その日の、おわりの会は、てるちゃんがプ−ルに入れたことが、その日のトップ賞です。みんなから、大拍手をもらいました。そして、金のメダルをかけてもらいました。
 翌日の「せんせいあのね」には、てるちゃんはもとより、クラスのほとんどの子が、「てるちゃんがプ−ルに入れたこと」を書いていました。てるちゃんは、お母さんに「わたしも直子ちゃんや恵ちゃんと水泳スク−ルに行く」ことを約束したそうです。2学期の初めには、もう25mも泳げるようになっていました。
 てるちゃんは、大嫌いだった水泳がとても楽しくなりました。
 これは、先生やクラスのみんなが力を合わせたからです。
 もしも、クラスの中に、水泳が苦手な子がいたら、その子が好きに、楽しくなるようにみんなで協力しましょうね。
1993年7月5日