朝会の話22 カスタネットだってだいじだよ

 おはようございます。
 先週から音楽会の練習が始まりましたね。どの学年も11月7日の音楽会に向けて一生懸命に練習に励んでいますね。私も時々講堂に行って皆さんの練習の様子を見せてもらっています。どの学年も一人一人の声や楽器の音色をひびき合わせながら、力を合わせて練習に励んでいるので、とても気持ちがいいです。
 先生が5年生を担当していたとき、山西君という子がいました。山西君はどちらかというと音楽はあまり好きな方ではありませんでした。ですから、合奏曲「ハンガリー舞曲第5番」の楽器の希望を申し出る時には「ぼくは、カスタネットがいい」と言ってカスタネットを選びました。カスタネットは、幼稚園の時から使っていたので、これならばあまり練習をしなくても簡単にできると思ったからです。
 確かにパート練習の時はとても簡単でした。ですから、遊び半分にいつも練習をしていました。みんながピヤニカやアコーディオン、リコーダー、木琴などを苦労して練習している時も、少しだけ練習して後は遊んでいました。
 いよいよ、みんなが一緒になって練習する合同練習です。
 ところが、とても簡単なリズム打ちなのに、山西君のところだけはどうも全体に調子にあわないのです。そのところだけは何度も何度もやり直しです。山西君はますますいやになってしまいました。ですから、どうでもいいと思って練習の時を過ごしていました。
 とうとう、音楽の先生に山西君は叱られました。先生は山西君に「この曲は初めの部分の山西君のカスタネットの所が一番大事なのよ。君のリズム打ちでこの曲がうまく演奏できるかどうかが決まるんだよ。君のリズムが狂えば全体がだめになってしまうんだよ。しっかり指揮者の方を見て、みんなのリズムをよく聴いて演奏しないとだめなんだよ。」
と言われました。
 それまで、山西君はカスタネットみたいな小さな楽器がそんなに大事な役割をしているとは思ってもみませんでした。
 それからというもは、山西君は目の色を変えて練習に励みました。「ぼくが一生懸命にやれば、ぼくが指揮者の方をしっかり見て演奏すれば全体がよくなるのだ」と思うと一生懸命に励まないわけにはいきません。山西君が頑張ることによって、他のみんなもすごくよくなりました。音楽会当日のハンガリー舞曲第5番は大成功です。
 音楽会が終わった後
「ぼくはこんな小さな楽器でも、とても大きな働きをしていること が初めて分かりました。ぼくは、音楽会の練習で音楽がとても好きになりました。」
と言ってくれました。
 みなさんの音楽会まで、あと2週間の練習です。みなさんの演奏する楽器一つ一つはそれぞれ大切な役割を持っています。お互いの楽器の音色をよく聴いて、ひびき合わせながら力を合わせて練習に励みましょう。
 今日は「カスタネットだって大事だよ」というお話でした。1992年10月26日