教育講演会「お母さん あなたこそ子らの生きる力です 4」

3.母親は子どもにやさしさを与える
 一年生の直子ちゃん、直子ちゃんの帰りの片付けが遅いのが気になりかけました。直子ちゃんは帰りの支度の時、陽子ちゃんの所に行くのです。彼女は、どちらかというと片付けるのが大変遅い子です。初めのうちは、わたしが声をかけながらさせていました。
 ある時、帰りの片付けの時に少し用事があったので、わたしは子どもに「きちんと片付けをして、待っていてね」と言い、職員室まで用事をするために、教室を離れました。用事を済ませて教室に帰ると、全員きちんと片付けを終り座って私を待っているのです。もちろん陽子ちゃんも片付けを終り座っていましたので安心しました。きちんと一人でできるようになったと安心をしました。その時は陽子ちゃんの片付けを直子ちゃんが手伝ったのだとは知りませんでした。
 直子ちゃんは、だれかが困っているとすぐ手助けによくいきます。直子ちゃんは自分の片付けをする前に、陽子ちゃんの片付けを手伝いに行き、それがすんでから自分の片付けをするのですから。直子ちゃんの片付けは一番最後になることもあります。
 私は「直子ちゃん、他人のことよりも、まず自分のことを先にしなさい」言い出したくなりほどでした。
 一学期の終りに、私はお母さんに
「直子ちゃんは、自分のことより先に困っているYちゃんの片付けを手伝って いますよ。とてもやさしい子ですね。いつも感心しています。」
と話しました。すると、お母さんは
「それはよかったです。私はいつも直子に『困っている子がいたら、手伝って あげなさいよ』と言っているのです。」と言われました。
 直子ちゃんはお母さんの毎朝のひと言をきちんと守っていたのです。
 母親のこの一言が、母親の日々の行いが、子どもにやさしさを育てているのです。生きる力の大切なやさしさを母親は与えることができるのです。