思春期を迎える子どもたち(10)

 思春期になって子どもとの付き合いが難しくなってから、なんとしなければならないと、思ったとしても、それは無理なことです。先月にも書きましたように子どもの幼少時代から、やるべきことが多いのです。
 わたしが、小学校六年生を担任した後に一年生を担任しました。その時につくづくと一年生の指導の大切さを感じました。まだ子どもの心のやわらかい時に、しておくべきことがあまりにも多くあることに気が付きました。
 思春期になってからでは、本当はもう遅いのです。子どもの幼少時代から、思春期の子どもの心をしっかりと見据えて子どもを育てていきたいものです。
 親は、子どもに小さい時から様々な期待をかけます。親のかなえられなかった夢を子どもに託することもあります。「いい成績をとることで」「先生に好かれることで」「ピアノをがんばることで」「友達に人気があることで」、親に認められ、愛されて思っている子も多いです。子どもも、親の願いに応えるように努力し、親を喜ばせたいと一生懸命に努力をします。ところが、そうした親の期待に応えられなくなったとき、親から見捨てられたと思って、この苦しさを親に話すことができないものです。
 このような場合、子どもは不登校になったり、場合によっては、自殺したりするようなことが起こることがあります。
 子どもは、親がいくら期待をかけられ、様々な習い事に精をだし、親の期待にこたえようと思っても、その親の願いに十分答えられなくなることが多いものです。いや、それが当たり前かもしれません。だから、「あなたの人生はこれしかない」「親の言うことを聞いていれば間違いがない」という言い方で子どもを追い詰めないようにしてほしいです。
 今日、思春期の子どもたちの悲しい事件があまりにも多いです。その原因は、「親の期待に添えない」という思いが、様々な問題行動を起こす原因になっていることを、親は知って欲しいものです。
 「いざとなれば、方向転換をしてもいいのだよ」と子どもに語り、「パーフェクトな子どもはいないのだよ。今のままのあなたでいいのよ」というメッセージを、小さい時から子どもに送り続けていくようにしてほしいものです。

「人は心に自分の道を思い巡らす。しかし、その人の歩みを確かなものにするのは主である」 箴言16章9節