思春期を迎える子どもたち(9)

 どの子にも一生のうちどこかで手のかかる時期があります。多くの場合肉体的にも精神的にも混沌として、自分自身ことがよく分からない思春期です。その一番難しい時期を何とか通り抜けると、親に対していたわりの気持ちが持てるようになります。
 子どもは小さいときから、「見て!」「来て!」「聞いてて!」と自分の方に目を引くための言葉ばかり発しています。ところが、ある日、突然さなぎサナギのように殻に閉じこもって黙り、何もしゃべらなくなります。子どもの話す言葉といえば「めし」「お金」だけになります。親が何かを聞こうとすると「別に」とすげない返事。そこでもう一度いうと、「うるさい!」とどなり「何も言いたくない」と親をまったくのシャットアウト。そのくせ、友達とは長電話で楽しそうに話します。「何でもしゃべってくれたあの子はどこにいってしまったのだろう?子どものことは何でもわたしは知っていたのに」と嘆きたくなるのは当然かもしれません。
 でもこれが普通の発達です。最近は多くの子どもたちが携帯電話をもち、子ども同士の会話はまったく分かりません。どんな友達と付き合っているかも分からず、親は心配になるばかりです。
 思春期の子育ての実態を、先輩のお母さんから、わが子がまだ小さいうちから聞いていると、心の準備もでき「うちの子もそろそろ仲間入りか」とイライラせずに見守ることができます。しかし、一人っ子だったり、親に時間がありすぎたりすると、見ないつもりでもどうしても見えすぎて困ってしまいます。
 また、思春期になると、初恋をしたり、夢精などが起こったり、母親に覗かれたくない世界を持つようになるのですから、子どもの様子をすべて知っていようなんて思わず、子どもを見守る姿勢になることが大切です。
 それと同時に、子どもが家でどんなに無口になっても「何でも聞くよ」という雰囲気を作っておくことが大切です。このことは、急にできるものではありません。小さいときから、子どもが求めたときに、気持ちよく応じているようにしておくことが大切です。いよいよ困ったときには一人で悩まず、経験の豊かな人に相談をするようにしてください。
「この悩む者が呼ばわったとき、主は聞かれた。こうして、彼らすべての苦しみから救われた」  詩篇34篇6節