思春期を迎える子どもたち(5)

Q この頃、中学生、高校生が親や祖父母を殺すという悲しい事件が起こっています。思春期の子どもをもつ親として悩むことが多いです。この子たちに親はどう接すればいいのでしょうか。
A 先月は父親や母親が、子どもの応援者であることに徹することの大切さを述べました。
 しかしながら、子どもの毎日の状況をみると、ひと言文句を言いたくなることもあります。前にも書きましたように、思春期の子どもは理屈ではよく分かっていても、それができない未熟さがあります。でも、それを指摘されると逆切れされることもあり、親としては難しい場面に直面することも多いです。
 また、親は「がんばって勉強しろ」「テレビばかり見ないでもっと勉強に精を出せ」と「かくあるべし」と規範を示しやすいです。
 だらだら寝転がってはいけないと叱咤されがちだった子どもは、親が寝転がっていれば怒ります。「がんばれ!努力しろ!」と叱咤されてきた子どもは、言うほどには、がんばりも努力もしていない親の姿に気付けば、切り返しをしてくるのは当然です。「お父さんは、今まで会社で忙しく休む間もなく働いていたので、ゆっくりとさせてあげてね」と母親が弁解してもこの言葉は子どもには通じません。「ぼくだって学校で一生懸命に勉強してきた」と言い返します。親としては突っぱねたくなるのは当然かもしれません。だが突っぱねれば、子どもの反発は募り、最終的には恨みとして残ってしまう結果になりかねません。
 やはり、子どもの言うがまま受け入れ、このような場合は親が謝罪するのが筋道であろうと思います。
 わが子の対しては言うほどのことを親自身ができていない。その事実を認め「親というのは偉そうなことばかり言っているね」と素直に頭をたれるほうがいいのです。親のこのような姿勢は、子どもの心に他人を許すことの大切さを感じるようになります。自分の実態を棚に上げて突っぱねる親には決して感じられないだろう尊敬の念も感じるようになります。
 子どもの心は純粋であるだけに手厳しいのは当然です。その子どもの純粋さに対抗して意地を張るのはやめ、子どもに負けてみるのもよいのではないでしょうか。わが子に諭せるほどではない親自身の実態を素直に受け入れた時、親子の関係は、より豊かな対等関係へと変容していくのです。
「キリストは…自分を卑しくし、死まで従い、実に十字架の死にまでも従われたのです」 ピリピ 2章8節 グッドニュース「母と子の相談室」より