ありがとう」「ごめんなさい」が言える子(5)

 「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉は、「おはよう」や「こんにちは」などの挨拶の言葉と違い、相手が自分のために何かしてくれたときや、相手に迷惑をかけてしまったときなど使う言葉であり、より深い意味で人との親密なかかわりの中で使われる言葉です。
 この欄を通じて何度も書いていますが、この頃の子どもたちだけでなく、大人たちも適切なときに「ありがとう」や「ごめんなさい」が言えないために、人とうまく関わることができず、トラブルが長引いたり、人間関係がこじれてしまったりすることも少なくはありません。
 最近ではメールがよく使われています。遠くに離れている人に対しては仕方がないにしろ、いつも会う人に対してもよく使われています。メール上では、「ありがとう」や「ごめんなさい」ということは、それほど抵抗なく言える人は多いですが、実際に顔をあわせて「ありがとう」や「ごめんなさい」という言葉を使えない人は多いです。
 言葉は感情から発せられるものです。この感情は、言葉に発せてこそ通じるものです。この感情を育てることが何より大切です。と同時に、「ありがとう」や「ごめんんなさい」と言うことで、人の対する感謝の気持ちや和解の気持ちが自然に生まれてくるものです。
 毎日の生活の中で、人と言葉を交わさない日はほとんどありません。人に対して感謝の気持ちを持てるように、「ありがとう」を言い、そして相手の要望に応えることができなければ、素直に「ごめんなさい」を言える子に育てていくことが、今日の親に課せられた課題です。
 わたしの担任していた子どものお母さんが風邪を引き、熱を出して寝込んでいた時に、1年生のふたごの男の子が一生懸命にお母さんのお手伝いをしたそうです。お母さんがやっと元気になったときに、二人の子の前に正座して「康くん、貴くん、お母さんが寝込んでいた時に、いっぱいお手伝いをしてくれてありがとう」と頭を下げたとのことです。
 こういう姿こそ子どもを幸せにする一番の近道になるような気がします。
「へりくだって、互いに人を自分よりすぐれた者と思いなさい。」 ピリピ 2章3節 グッドニュース2007年10月号「母と子の相談室」より