ありごとう子供たち  交流学級の先生、子供たちを信じて

 障害児学級の子供たちにとっては、通常学級との交流学習は重要である。交流学習によって、多様なことを経験し体得してくる。
 1年生の時のN君、初めての交流学級での学習は大変だった。一時間ずっと泣きわめいていた。片手にN君を抱きかかえて指導された時もあった。
 その中で、N君もまわりの子供たちも成長した。交流学級の一番の元気者のS君「N君は言葉がしゃべられへんだけや。どこも元気だから、きっとしゃべれるようになるで。がんばりや、ぼく応援するからな。」
と言ってよく世話をしてくれた。
 また、ひとりの母親は学年末の懇談会で
 「この一年間、N君のおかげで私も子供も一回りも二回りも人間が広くなりました。」と話してくれた。
 2年生になったN君、まわりの子供たちがよくかかわってくれた。

 今日、クラスのTさんから電話がありました。劇の練習があるから出てくるようにとのことでした。主人が連れていきました。TさんたちはNを連れて行ってしまいました。主人はすぐに帰ってくるだろうと思って待っていたのですが、なかなか戻らず、心配して家に電話をしました。あちこち連絡してやっとKさん宅にいることが分かったのですが、家でハラハラしながら待っておりました。親子とも初めての経験でした。             55・ 2・24 連絡帳より

 朝、学校に行くと「N君ときのう劇の練習をしたのよ。」とうれしそうに話しかけてくれました。Nのグループの人たちはみんなして、劇をやるそうです。            55・ 2・25 連絡帳より

 昨日の5校時、Nのグループの人たちは「花咲かじいさん」の劇をしました。Nはみんなに助けられて、大きな木になりました。とても上手でした。Nの回りの子供たちの温かさに感動しました。        55・ 2・26 連絡帳より

 3年生になったN君、この9月28日の運動会に向けてグループでリレーの練習中である。N君がいるから(N君は走る意欲が乏しく教師や友達の手を借りても半周以上は遅れてしまう)勝つことはできない。しかし、グループの人たちはN君を含め練習に励んでいる。そして、
 「N君、しっかり走りよ。頑張って走るのよ。」
と励ましている。勝つことよりも、N君を同じグループに入れて、共に走ろうという温かさ。
 運動会当日は予想通り一周半遅れてゴールイン。しかし、Nのグループの子たちは「N君、よう頑張ったね。」
と励ましていた。
 交流学習について、いろいろな問題点はある。しかし、交流学級の子供たちや先生を信じてこそ、子供は成長する。それのみならず、周りの子供たちにとっても重要な学習の場でもある。彼等は人間としての生き方を体得していっている。
 N君を中心とした試みの中から得たもの、それは私の教育の根本的姿勢となっていった。