「ありがとう」「ごめんなさい」が言える子(2)

 先月号で簡単なひと言をそだてるには、学校だけでは出来ません。何よりも家庭が大切なのですということを述べました。
 4月の朝日新聞の声欄に、長崎市の60歳の女性の方の投書が載っていました。それには「夫婦の会話はおはようから」と題して「定年退職した夫と一日中一緒の生活が始まった。ある朝、夫の足音に振り返ると、思わず『おはようございます』と言っていた。夫へ『おはよう』とすんなり出るようになると、『ありがとう』『うれしい』も素直に言えた。 中略 夫婦の会話をスムーズにするためには、まず朝一番に『おはよう』とあいさつをすることを提案したい。」という投書でした。
 夫婦の会話をスムーズにするためにも、子どもを中心にした家庭での会話をスムーズにするためにも「おはよう」「ありがとう」「ごめんなさい」「どうぞ」といった簡単な言葉、何よりも家庭で豊かに使われるようになる事が大切なことです。
 子どもがこのような簡単な挨拶、感謝の言葉が使えるようになるためには、家庭の中で自由に使われるようになる事が大原則です。
 さて、「ありがとう」という言葉を生み出す土台となるものは、してもらう喜びという感情であり、してくれる人の気持ちや好意に応答したいという感謝の感情です。もちろん「ありがとうと言わなくてはならない。」という義務感もあるかもしれませんが、喜びや感謝の感情がなくては、自発的で自然な応答としての「ありがとう」生まれにくいのではないでしょうか。
 人と人とのかかわりは、本来相互的なものです。乳児期はお母さん、お父さんなど他者から与えられる世話や思いやりに対して意識的に応答しているわけではありません。子どもを育てる親は子育てに対する感謝の言葉や好意を求めることはしません。
 しかし、幼児期も後期になり、同年齢の子どもとの集団生活が始まると、喜びを経験し、応答することが求められるようになります。その時期になって慌てて指導してもなかなか見に着くものではありません。
 家庭で子どもと親の間で繰り返される喜びや感謝の経験を積み重ねながら、その感情を家庭で育てる事が大切です。
「あなたがたのために絶えず感謝をささげ、あなたがたのことを覚えて祈っています」   エペソ 1章16節 グッドニュース2007年7月号「母と子の相談室」より