ありがとう子供たち ? 戦いの中から得たもの 子供になりきって

 N君を中心としたかかわりの中から 子供との心のふれあい
 子供になりきって
 二年生のK君、彼の口から出る言葉を聞いた者は、家族以外誰一人もいない。ただ、うつ向きかげんから隠れるように私を見る眼だけが、彼との対話であった。
 今日、初めて自分の教室に間違えなくやってきた。私が顔を見せると、にっこと一べつして、すぐに顔を隠す。彼の初めての反応であった。   53・ 4・12

 一週間経っても、彼の口から出る言葉を聞くことがなかった。
 K君、算数セットより、10のタイルカードを取り出し、二つ合わせて立てようとする。立たない。私にしてほしいとの表情。立ててやる。それを自分の手で倒す。にこっと笑う。何度も同じことを繰り返す。五、六回目、倒したとたん「アー」と声を出す。自分が声を出したことにびっくりした様子。   53・ 4・14

 犬の鳴き声をまねし、四つん這いになり、追いかけてやる。「キャッ、キャッ」と叫び逃げ回る。何度も追いかけてやる。他の人が見れば気が狂ったような様子で追いかけ回す。K君「キャッ、キャッ」と叫び声をあげて逃げ回る。実に楽しそうである。     53・ 4・18

 教師面をしていてはだめだ。話さない子に対して、自分から話させようと努力したがだめだった。しかし、外面を気にせず、恥も外聞も捨て切って教師が子供自身になりきり、子供と対等、いや、それ以下に下がりきった時にこそ、この子らに対しての教育が可能になるのである。
 この日以来、仲よし学級では、一言二言、言葉が出てきた。