朝会104 離任式  さくらの木からの卒業証書

 おはようございます。
 今朝、私はいつもの道を通って学校にやってきました。西門の坂を上がった所に着くと、「校長先生、校長先生」と呼ぶ声がしました。ふと、気が付くとさくらの木のが私を呼んでくれています。確かに、3年前、私がこの学校に来た時にも私に呼び掛けてくれました。今日でこの学校に来る最後の時にも、さくらの木さんは私を呼んでくれたのです。
 「さくらの木さん、何?でもね、私はもう校長先生ではないの。新しい校長先生は、また、明日やってくるの。」
 「そうだったね。でも、いつも校長先生と呼んでいたからつい呼んでしまったの。でもね、私は校長先生と呼んでおきたいの。いいでしょ」「うん、今日だけね」「ありがとう」と言うのです。そして、こんな話をしてくれました。
「あのね、校長先生が初めて来たとき。みんなにお話したこと、ちゃんと覚えているよ。」「すごいな、どんな話をしたのかな。」「校長先生は忘れたの。」「みんなにいっぱい話をしたからどんな話だったかな。教えて」「あのね、うれしいことがいっぱいあったという話だったよ。」「ああ、そうだったね。広い広い空があること、それから、桜の花や菜の花、チューリップの花がいっぱい咲いていること、あと一つは、えーと」「校長先生忘れている。三つ目はね、元気で明るく、力いっぱいがんばる皆さんに会えたことだったよ。」「そうだったね。この唐櫃小学校に来てうれしかったことを話したのね。」「それからね、その後で講堂で入学式があったでしょう。その時に、今の4年生の子に話したことも、ちゃんと覚えているよ。」「すごいね。」「3つのことをお話したでしょう。一つは元気で挨拶をする口のこと、それから、みんなと仲良くする手のこと、三つ目は、お友達の話をよく聞く耳のこと。その時の1年生だった子、ちゃんと覚えているかな。」「きっと覚えているよ。また、聞いてみるよ。」
「校長先生、去年の1学期に、3回も続けてお話したでしょ。洋子ちゃんのこと。」「そうだったね」「皆にいじめられていた洋子ちゃん、とてもかわいそうだったね。唐櫃小学校のみんなはとてもよく聞いていたね。あれから、いじめる子がいなくなったよ。校長先生うれしいでしょう。」「うれしいね。みんなこれからも仲良くやってくれるよ。安心してこの学校のみんなとさようならができるね。」
「校長先生、今日でこの学校も、それから学校の先生も終りになるのね」「うん、38年間たくさんの子と一緒に過ごしてきたけれど、今日で最後と思いとさびしいなあ」「でもね、校長先生がもう先生を止めるということは、前から、ちゃんと分かっていたよ。」「なぜ、分かったの。」「あのね、3学期の終業式の時の話でよく分かったよ。」「へー、なぜなの」「あのね、あの時に、あなたのたった一つしかない尊い命、これを大切にしましょう。そして、その命をいっぱい輝かしましょう。という話をしたでしょう。その時、これで最後だから、校長先生の一番言いたいことを皆に話しているなあと感じちゃった。」「すごいね。わたしもこれで最後だと思うと、みんなに、これだけは話しておきたいなあと思ったの。さくらの木さん、とてもよくお話をきいてくれてありがとう。とてもうれしいなあ」
「校長先生、先生はお話がとても好きだったのね。ちょっと長いお話の時があったけどね。」「そうだったね。でも私、皆にお話をするのがとても楽しみなの。もっともっとお話したいけれど、今日でもう終りなの。」「ぼくさびしいな。校長先生のお話がもう聞けないから。」「そんなことないよ。また、新しい校長先生がいっぱいお話をしてくれるよ。楽しみだね。また、この学校に来たら教えてね。」
「校長先生、最後にとてもいい物をあげるよ。」「へー何なの。」「卒業証書だよ。」「この私に卒業証書?」「さあこれだよ。読むよ。いい」「卒業証書、鎌野健一、よくがんばりました。これからも大きな声で明るい朝の挨拶をがんばりましょう。神戸市立唐櫃小学校 桜の木」「ありがとうね。じゃ桜の木さん、さようなら」
 もっと、先生は桜の木とお話がしたかったですが、時間がないのでさようならをしました。
 桜の木や、みんなととても楽しい3年間を過ごせてとてもうれしかったです。それでは、みなさんさようなら。1995年4月10日