親の生き方・考え方を示す

親が子どもに自分の生き方や考え方を示す場面は、日常生活でそれほど多くないかもしれません。しかし、子どもの成長にとって、親の生き方や考え方を示すことはとても大切なことなのです。
 子どもにとっては、様々な事象に対する親の反応がすべてモデルになります。
 たとえば、道路を横断する時、親が信号を守って横断すれば、子どもは信号を守るようになります。また、何かにつけて、子どもをすぐにたたくような親であるならば、子どもは、攻撃的な子になります。
 わたしの、教え子の中に、どんなことに対しても「ありがとう」と感謝の言葉を言う子がいました。その子のお母さんの話を聞いて、そのわけが分かりました。お母さん自身が、子どもに対しても「ありがとう」と常に言いつづけておられました。
 幼い子の場合と、自立を目指す思春期を迎えた中学生の場合が異なるところは、近寄り過ぎる親の存在をうっとうしく感じているかいなかです。また、幼い子のように、親の言葉をすぐに聞き入れるとは限らないことでしょう。
 しかしながら、「子どもは親の後ろ姿で育つ」ということばがありますが、幼少時代の子どもにも思春期の子どもにもその真理は変わりません。子どもに失敗や過ちが起きた時、あえて、示していかなければならない時があります。
 わたしが、小学五年生の時、大きな過ちを犯しました。そのとき、頑固なわたしは、「ごめんなさい」と素直に謝ることをせずにいました。父は、わたしを学校の運動場に連れて行き、砂場の縁にわたしを座らせました。父もわたしの側に座りました。その時素直に謝ればよかったのですが、謝りもせずずっと黙っていました。一時間経ったでしょうか。ふと、わたしは、父の顔を見ました。父は涙を出して、ずっと祈っているではないでしょうか。その涙を見たとき頑固なわたしの心を全く溶けていき「ごめんなさい」と謝ることができたという経験があります。
 わたしは、その父の生き方を自分のものとして三十八年間の教員生活を送ることができました。親の生き方考え方が子どもの生き方考え方になるのです。
「愛されている子どもらしく、神にならう者になりなさい。」エペソ書5章2節 グッドニュース2002年9月号「母と子の相談室」より