子どものやすらぎの場として


子どもにとって家庭のもっとも大切な機能は「成長とやすらぎの場」です。
 4月号は成長の場としての家庭について書きました。小学生期の最後として最も大切なやすらぎの場としての家庭づくりについて書いていきたいと思います。
 一年生を担任していたときに、最初の学級懇談会で、わたしはお母さん方に「子どもが家に帰ってきたとき、子どもを抱いてあげなさい」と言いました。お母さん方は怪訝な顔をされました。そして「一年生に入学したのだからいつまでも甘えさせる必要がないのではないですか」と言われました。ある面では確かにそのとおりです。しかし、一年生に入学した子は、学校でストレスをいっぱい抱えて家に帰ってきます。家に帰ってきたら「宿題はないの」とか「今日学校はどうだった」「先生に叱られなかった」とか矢継ぎ早に問い掛けると子どもはどんな気持ちになるでしょうか。子どもが家に帰ってきたら、まず、抱いてやり、あたたかい励ましの言葉をかけてやることが大切なのです。手作りのおやつでも与えると、子どもはほっとします。そして自然に学校のことを話し始めます。
 わたしはこの方法で不登校の子どもを立ちなおさせることができました。
 子どもにとって家庭は安らぎの場でなければならないのです。子どもを迎えることができないときは、手紙を書いておきましょう。また、子どもが帰ってくるころに電話をかけてあげましょう。
 高学年になっても、抱いてやらなくてもあたたかい言葉を一言かけてやることが大切なのです。
 六年生の女の子自ら命を絶ちました。その子のお母さんが「夕方、お店が忙しい時A子が『お母さん』とわたしを呼んだのです。でも『今、お母さん忙しいの』と振り向きもせずに言ったのです。もし、あの時、わたしが振り向き『Aちゃん、なあに』と答えておればこんなことにはならなかったのに」と涙を流しながら語られました。
 子どもにとって家庭はやすらぎの場でなければなりません。学校も塾もやすらぎの場とはなりません。家庭、特にお母さんの一言が子どもにやすらぎを与えるのです。
「主は私を緑の牧場に伏させ、いこいの水のほとりに伴われます」 詩篇23篇2節 グッドニュース2002年5月号「母と子の相談室」より