子どもの努力や成長を気づいて認める


私の教え子にA男がいました。学力はそれほど優れてはいませんでしたが、こつこつと勉強をする子でした。掃除とか当番などは、友達が遊んでいても、黙って自分なりにこつこつとやっていく子でした。
 しかし、覇気がなく、どこか自信がなく、自ら積極的に物事に取り組むことが少ない子でした。
 A男の二つ下に妹がいました。彼女はA男と違って、明るくはきはきとした子でした。友達も多く、運動場でもみんなをリードしていくような子でした。積極的な子であり、どちらかというとA男と反対の性格でした。
 私は、とても気になり母親と話す機会を持ちました。母親は開口一番「A男は、本当に困った子です。いつもぐづぐづして、私が言い聞かせてもまったくそのとおりにしないのです。妹は、その点兄とは違って、いつもはきはきして私の言うことをよく聞いてくれます。先生もきっとA男のことでお困りでしょうね。」と言われるのです。
 私は、A男の学校での様子について話をしました。黙ってこつこつと学習をしていること、一生懸命に掃除や当番の仕事をしていること、友達は少ないですが、とてもやさしいことなど、A男のいいところを話しました。しかし、母親はそれを認めようとはしません。
 どうも妹は母親似であり、母親の期待通りに育っているのでしょう。口には出ませんでしたが、兄は母親の嫌いタイプだったようです。それと同時に、A男が一生懸命に取り組んでいるのに母親には認めてもらっていない状況であるようでした。
 そこで、私は、母親にA男は、妹と違った面ですばらしいことがあることを話しました。そして、兄妹であってもそれぞれ個性がありよさがあり、それを生かすことが何よりも大切であることを話しました。そして、A男を伸ばすには、A男のもっているよさを親が理解をしてやり、心から認めたりほめたりしてほしいこと、家庭がA男にとって温かみのある場所になるようにしてほしいことをお願いしました。
 その後、学校でのA男の様子が変わってきました。少しずつですが自信を持ってくるようになりました。
「彼を力づけ、彼を励ませ。」 申命記4章28節 グッドニュース2002年3月号「母と子の相談室」より