早期教育より心の教育を

自然体験によって、子どもたちは大きく成長することを先に述べました。ところが、子どもたちは自然体験ができない生活を送っています。
 少し古い調査ですが(平成5年)小学生全体で4人に1人が、中学生に至っては5人に3人が塾に通っているという結果がでています。今日ではもっと多くの子どもたちが塾に通っていることでしょう。高学年の子どもたちはもちろん、中学年の子どもたちが、学校の授業が終われば、お弁当をもって塾通いをしている姿を都市部ではよく見ます。
 小学生からではなく、いい小学校に入学させるために幼児期から塾に通っている幼い子どもたちもいます。都市部の幼稚園の子どもたちを対象に行われた調査(平成9年)では、学習塾に通う幼児は約一割、10年前に比して大幅に増加しています。今日ではもっと増加していると思います。
 このような調査からうかがえるように、都市部ではかなり早い時期から知育に力を入れようとする親が少なくありません。
 知育に偏った教育を施そうとして、幼児の遊びや様々な体験活動の機会を減らしてしまうことは好ましいことではありません。幼少期からひたすら勉強させられた子どもが、小・中学生の段階から疲れてしまい、自発的な学習意欲を失ってしまう場合も少なくありません。現在小学校の低学年から「授業が成り立たない学級」(一般にいわれる学級崩壊)が増えているのも、ここに原因があるのかも知れません。
 更に重要なことは、早期教育が行われるときの親子関係の変化です。すなわち、親が他の子どもとの相対的な比較に目を奪われてしまうこと、早く成果をあげようと焦りいらだってしまうこと、自分のベースで自由に考えることを大切にせずあらかじめ定められた答えを性急に求めること、子どもの生活全体にわたって過剰に干渉することなどがあげられます。このような親の態度では子どもの心の豊かな成長がゆがめられます。
 知育に偏った教育は、今日の社会においても大きな問題になっています。
「イエスはますます知恵が進み、背たけ も大きくなり、神と人とに愛された。」 ルカの福音書2章52節
グッドニュース2000年5月号「親と子の相談室」より