教育講演会「お母さん あなたこそ子らの生きる力です」2

1.母親は子どもの心を癒す力がある
 わたしの親しい先生から聞いた話ですが、勇君のお母さんは午後から夜までの勤めに出て居られます。そのため、お母さんの愛情を十分に受けることなく成長したきた一年生の勇くん。その腹癒せか、入学当初より周りの子をいじめてばかり日々、教師の手をやかせてばかりの子でした。
 4月の終わり、担任は家庭訪問をする機会が与えられ、はじめて勇くんの生活の状況を知りました。
 母親の言われるには、子どもは学校から帰ると、マンションで一人で過ごし、夕刻になると母親が準備した夕食を一人で食べるという生活の繰り返し。テレビを見ながら寝てしまうとのことです。テレビを消して寝るように言っているのですが、テレビを見ながら寝入ってしますとのことです。
 担任はお母さんに「お母さん、夜帰って来られたら、寝てしまっていたとしても、勇くんを抱きかかえ、『勇ちゃんただいま、ひとりでお留守番ご苦労さ何。ありがとう、お母さんと一緒に寝ようね』と声をかけてください。」とお願いしました。
 子どもを育てることに悩んでいた母親は、素直に教師の願いに応えました。一か月余り後から、勇くんはみるみる変わってきました。
 ある時、勇君は先生の背中に飛びついて来て、「先生、僕ねいつも夢を見るんだよ。いつもお母さんに誉められている夢だよ」というのです。
 ちゃんと子どもの心にお母さんの思いが伝わったのです。

 入学当初から不登校気味だった洋子さん、5月に入ってもその状況は変わりません。私の願いにより、1年生になったのに、抱きかかえることを止めていたお母さんは、わたしの言った通りに、洋子さんが学校から帰ってきたら「お帰り、よくがんばったね」と言ってしばらく抱きかかえてやりました。一か月も経たない間に、洋子さんの不登校はなくなってしまいました。
 これらの事例のように、母親は子どもの心の悩みを癒す力があるのです。そして、新しく生き抜く力が与えられるのです。
それゆえに、子どもにとって母親は生きる力のです。