朝会の話5 お母さんへの請求書

 
 おはようございます。
 きのうはどんな日でしたか。そうですね、母の日でしたね。きょうは、お母さんに関係したお話をいたします。
 3年生になった一郎君、お母さんのお手伝いがいろいろとできるようになりました。きのうも、
「お母さん、今からお買い物に行くから、妹のさっちゃんと遊んでいてね」
と言われました。一郎君は
「はい」
と返事をして、妹と遊びました。お母さんが買い物から帰って来ると、お母さんは
「一郎君、妹と遊んでくれてありがとう。えらかったね。かしこかったよ。」
と言ってほめてくれました。
 この前も、お父さんが会社から帰って来るころに雨がふりかけました。お母さんは
「一郎君、すまないけれどお父さんの傘を持って、駅まで迎えに行ってちょうだい。」
と言われたから、
「うん、いいよ。」
と言って唐櫃台の駅まで迎えに行きました。お父さんはとても喜んでくれました。家に帰るとお母さんは
「一郎君かしこかったね。ありがとう。」
と言ってくれました。
 また、お母さんと買い物に行って、重たい荷物を持ってあげたけれど、「ありがとう、えらかったね」と言うだけです。今まで1回も、一郎君はお駄賃をもらったことがありません。一郎君はちょっと腹が立ちました。「ぼく、いつもお母さんの言われたことをちゃんときいてお手伝いをしているのに、いつも、ありがとう、えらかったねと言われるだけだから、つまらないなあ。ちょっとお小遣いをもらえたらいいのになあ。読みたいまんがの本も買えるし、おやつも買えるしなあ」と思いました。
 そこで、お母さんにお手紙を書こうと思いました。お金をくださいというお手紙だから、請求書といいます。夕飯を食べてから、一郎君は次のようなお手紙を書きました
     お母さんへの請求書
 1 買い物に行ってあげ賃         100円
 1 買い物に行き荷物を持ってあげ賃    100円
 1 お母さんのかたをたたいてあげ賃    100円
 1 妹と一緒に遊んであげ賃        100円
 1 お父さんの傘を持っていき賃      100円
  あといっぱいあるけれど、忘れたのでみんなサービス
         合計           500円
 一郎君はにこっとしました。500円もあると、いつも読みたいと思っていたまんがの本が買えるなあと思いました。
 翌日、朝ごはんの後に、一郎君は昨日書いた手紙をお母さんに渡しました。お母さんはその手紙を見て、にこっと笑ってくれました。一郎君は「やったあ、これで500円貰える、うれしいな」と思いました。
 学校に行ってもうれしくてたまりません。勉強が終わるとすぐに家に帰りました。すぐに、宿題をしました。
 お母さんが
「一郎君、ごはんだよ。いらっしゃい。」
と言われたので急いで行きました。すると、一郎君のお茶碗の側に500円玉が置いてありました。そして、その下に手紙もありました。一郎君はうれしくてたまりません。きょうは好き嫌いも言わないでみんな食べました。急いで500円とお母さんからのお手紙を持って自分の部屋に行きました。「ようし、明日まんがの本を買いにいこう。うれしいな」と思いながらお母さんのお手紙を開けました。それにはこんなことが書いてありました。
     一郎君への請求書
 1 春のえんそくのお弁当作り賃           0円
 1 どろんこにした体操服の洗濯賃          0円
 1 雨の日に学校まで傘を持って行き賃        0円
 1 赤ちゃんの時のおしめ代え賃           0円
 1 赤ちゃんの時のお乳飲ませ賃           0円
  他にいっぱいあるけれどみんな0円
      合計                   0円
 一郎君は、お母さんに貰った500円玉と手紙を見て、だまってしまいました。
 さあ、一郎君はなぜだまってしまったのかな。また、どんなことを考えたのかな。先生にお手紙を書いてくださいね。
 今日は、お母さんへの請求書というお話でした。
1992年5月11日
 
 子供たちからの手紙1
   校長先生の話を聞いて
 私は、初め話を聞いていると一郎君がとてもかわいく思えました。いろいろお手伝いをしてほめられた。でも、何か物足りなくて、お金を請求するむじゃきな態度がものすごくかわいかったです。もう一つは、小さな子がお母さんに請求書を書いたことです。「請求書なんて知ってるんだな」と思って考えると、自然に私の顔に笑顔があふれました。
 そして、期待して夜ごはんを食べに食堂へ行った気持ちがとてもかわいく思いました。
 500円玉といっしょに置いてあったお母さんからの手紙を見て、一郎君の気持ちがいっぺんに変わったことにはとても驚きました。やはり、小さい子供にもお母さんの気持ちが分かるんだなと思いました。
 一郎君はお母さんの手紙を読んだ後、お母さんにお金をきっと返したと思います。
「今まで自分がしてきたお手伝いの何倍も、お母さんは僕にしてくれているのに、お母さんは僕に1円も請求しない。それなのに、僕は、1回やるごとに100円なんかもらって、悪すぎる」
一郎君はそんな気持ちになったんだと思います。だから、きっとお金を返したと思います。
 一郎君はお母さんの存在ということが、改めて分かったと思います。これからは、お母さんのありがたさをとてもよく味わって、わがままを言わずにお手伝いをしていこうと決心したと思います。お金など関係なくて、お手伝いをどんどんしていこうと私も思いました。       6年  合田妙子
 
  私からの返事
 合田さんの優しさが私には手に取るように分かりました。一郎君の子供としてのかわいさとともに、小さい子に対していつも優しく接してくれている合田さん、すばらしいですね。
 一郎君もお母さんのすばらしさがよく分かったのですね。それと同じように、合田さんも心からお母さんにありがとうと感謝されていることと思います。そして、お母さんのその思いに少しでも応えようと努力されていることと思います。
 きっと、合田さんはいいお母さんになり、やさしい子供を育ててくれると思います。
 お手紙を書いてくださってありがとう。また、朝会で聞いたことについてお手紙をくださいね。
 
  子供たちからの手紙2
   校長先生の話を聞いて
 ぼくは、先生の話を聞いて、あらたに、母に世話になっていることを感じました。
 ぼくは、母に世話になっているのに、ふと、時々自分のした小さい手伝いが大きく見えて、お小遣いが少なくなったときなど、「あの時お駄賃をもらわんでくたびれもうけだった。よし、今あの時のお駄賃をもらおう」など、悪いへんな気持ちが出てきます。
 お母さんに請求書を出した一郎君も、その悪い心が出て、あの時のお手伝いのことを思い出したのでしょう。今までお母さんに頼っていたことを知らずに請求書などをだしました。そして、500円をもらい、お母さんからの請求書をもらいました。その後ぼくは、一郎君は500円を返し、「ごめんね」と言ったと思います。  6年  武藤大樹
 
 私からの返事
 お手紙ありがとう。先生の話を聞いて、自分のお母さんのことを考えてくれたとのこと、ほんとうにうれしいです。
 そして、自分の生活を反省してくれてとてもよかったです。武藤君はとてもやさしい子にちがいないし、武藤君のお母さんもとても優しいお母さんだろうなあと思います。
 
 子供たちからの手紙3
   校長先生の話を聞いて
 私は校長先生からこの話を聞いたとき、こう思いました。
「お金をもらうためにこんなことをするならやめればいいのに。」
 人の事はあまり言えないが。私もお使いに行った時など「せっかく行ってきてあげたのだからお駄賃ちょうだいよ。」とお母さんに言ったことがあります。でも、今はなんとなく後悔しています。お手伝いはいろいろと忙しいお父さんやお母さんに対して親切にしてあげることだと思います。
 校長先生が最後に
「どう思ったでしょう」
と言った時、すぐに思いました。
「お母さんの請求書を見た一郎君は、きっと私のように後悔しただろう。ひょっとしたら泣いていたかもしれない。」
 私は、校長先生が言ったお話をまるで私の事のように言われるのだからびっくりしました。本当に、お手伝いなんかお駄賃をもらうためにやるのではないと思います。これからは今までしたことを止めたいと思いました。そして、お手伝いは言われてするよりも進んでやるほうが、私もうれしいのだから、これからは進んでやろうと思いました。             6年  寺本亜由美
 
 私からの返事
 寺本さんはいろいろな経験を通してすごく大きく成長されましたね。とてもすばらしいことです。「お手伝いを進んでやろう」ということすばらしい結論ですね。つねに自分を犠牲にして私たちのために働いてくださっているお母さん、ほんとうにありがとうですね。